森とイエ

森とイエ学生設計コンペ2024 出展作品公開

2024年に初開催となる「森とイエ学生設計コンペ」は応募点数31点のご応募を頂きました。
一次審査により上位5点を選定、展示、住民投票の後、2024年12月7日(土)公開二次審査が下川町まちおこしセンター「コモレビ」にて開催され、「森とイエ学生設計コンペ2024」の審査結果発表を行いました。
最優秀賞、各賞受賞作品および受賞者の方々は以下の通りです。
審査委員長 照井康穂氏、審査委員 髙橋和之氏と堀部太氏による各受賞作、また選外となった全作品の講評は以下の通りです。

審査委員長総評

審査委員長 照井康穂

まず、本企画初回にも関わらず、たくさんのご応募をいただきましたことに感謝いたします。全応募作品からテーマであるローカリティーについて皆さんが個性豊かにそして真摯に向き合われたことが窺え、大変嬉しい気持ちで審査させていただきました。皆さんが研鑽を積まれご活躍されることを大いに期待しています。

審査結果

最優秀賞

39 / 林 拓実 様 / 北海道大学大学院
「行燈の灯火」

審査委員講評
下川という地域の住民性やソフトの部分を含めて形態への昇華がよく考えられており、非常に重要なところを押さえています。ローカリティの捉え方として、別の町ではなくここであるからこその表現がなされていることを高く評価しました。

優秀賞

14 / 杉下 英宇様 / 北海道科学大学
「カムイの花嫁」

審査委員講評
文章として表現されている「私の世界とローカリティー」が素晴らしい反面、中々伝わりづらい部分もあったように思います。その世界観を鉄やガラスで構成された建築として置き換えた時にどのようになっていくだろうかと、杉下さんのさらなる成長を期待しています。

審査委員賞(照井賞)

52 / 千葉 美沙季 様 + 髙山 兼伸 様 / 札幌市立大学
「Balloon House」

審査委員講評
人と人とのポジティブな繋がりが、人と建築との繋がりになっていったらどういう風になるのかということを考えてみた、というところが秀逸です。立体になった形が見られたら、最優秀となっていたかもしれません。

審査委員賞(高橋賞)

12 / 田村 さやか 様 + 小西 神太郎 様 / 北海道科学大学
「繋ぐ、紡ぐ」

審査委員講評
北海道にはあまりない棚田を選び、その棚田に適したスケール感のあるものを表現したというところが優秀です。ローカリティーというテーマを棚田の形態として捉えている点も素晴らしい。

審査委員賞(堀部賞)

15 / 渡邉 天翔 様 / 北海道大学大学院
「Forest of the Box」

審査委員講評
他の地域でも活用ができそうな、建築自体というよりはシステムとして優れている案であるように感じました。目新しさとしては足りない部分もありますが、その考える力を今後も建築の中に活かして欲しいと思います。

出展作品

2 「AM5;00 ねぐら入りの家」
自身の経験を媒介して本課題のテーマに向き合ったと捉えられるストーリーは良いと思います。あなたが目指す「人とマガンの共生」を実現するには、少なくとも建物の規模や形態についての考察及びそれに基づく工夫が必要です。
3「くうきを纏う家」
建物の一方は樹木に覆われながらも、もう一方は湖畔に跳ね出す配置計画が面白い。ルーバーの外皮を調整する事で周辺環境との距離感が変化するのも面白い発想である。一方で、コンクリートという強いもので囲われた寝室やキッチンは、周辺環境との関係が希薄で、この建築の魅力を半減させてしまっていると感じた。
 
5「火と暮らす」
「火」=人の心を癒す力を利用してのコミュニティが、今回のテーマ『ローカリティ』でしょうか?今後普及するであろう薪ストーブの着目点は良いので、移動式小屋に限らず、色々な発想が望まれます。
6「ユク wrap」
このランプシェードからの光が「暮らしを照らしてくれる温かい灯り」となるには、ランプシェードによる、物理的な光の質の変化の表出についての、検討と工夫が欲しかった。
8「御伽のお花屋さん」
プランはしっかりと計画されており、完成度が高い。しかし、アイディアコンペという視点で見ると、作者独自のアイディアや目新しさは感じることができなかった。
9「語り継ぐ」
札幌の地に建つ面白さがあり、一般の方々があまり触れることが無い能舞台を取り入れたことは良いと思います。ただ、交流の場として建築されるのが物足りなさを感じてしまい、もう一つ工夫が必要と思います。
21「誰かと生きる」
 薄れかけていた『おすそわけ』というキーワードから、コミュニティの活性化に繋げる考えは良いと思います。 円形に拘るのであれば、円形である建物のメリットをもっと発信して欲しかったです。
22「静寂閑雅」
自身の経験と感性を媒介して本課題のテーマに向き合ったところに説得力があります。弓道には集中力を高める為の順序立てられた所作ならびに、弓道場という建築型があろうかと思います。伝統的なその所作と建築型の関係を分析し、その効果をこの場所で、建築通じて得られるような建築的展開があれば尚よかったと思います。
23「朱鞠内湖」
分棟式の宿泊施設で、宿泊する人によってそれぞれの配置を変えることができるアイディアは面白い。しかし、それぞれの箱がしっかりと計画されておらず、チセを参考に形状を決めただけで、分棟式を活かす箱になっていないと感じた。
24「斜め壁の集合住宅」
斜めの壁により様々な空間を造り出し、自然環境も考えられているのは良いと思います。 今回のテーマ『ローカリティ』をどのように捉えているのか知りたかったです。
25「街中でベールに包まれる」
この案においては、「街の囲い」に記述されていることがイメージに留まらず、具現化できる物理的具体的な提案(スクリーンの配置計画、距離(寸法)、スクリーンの素材、スクリーンの設置方法など)があれば尚良かったと思います。
26「Okurayama Forest Vineyard」
率直に大倉山のこの場所でワインを飲みたいと思いました。ワイナリー上階でのテイスティングや 飲食できるスペースからのすばらしい景色をもっと表現して欲しかったです。
28「椅素」
テーマの『ローカリティ』に対して椅子を作品に選んだ理由を教えて欲しかったです。地域にくらす人々が、一人一人ありのままに生活できればいいと思うのであれば、 森の中に限らず、もっと色々な場所での椅子の存在があっても良いと思います。
30「松風に香る家」
敷地がアカエゾマツの管理区画内で、非常に魅力的だと感じた。しかし、建物の説明がなく、なぜこのような計画になっているのか読み解くことが難しいプレゼンテーションであった。
36「頭の中がうどんになる。~日本最北の手延べうどんの町~」
タイトルが面白く、プランはしっかりと計画されており、完成度が高い。しかし、アイディアコンペという視点で見ると、作者独自のアイディアや目新しさは感じることができなかった。
37「トマトを生かす」
建物(建築)以前の空間についての考察が大切です。「建築のかたちと空間をデザインする/フランシスD.K.チン 著/太田邦夫 訳/彰国社」を熟読すると良いでしょう。
38「Tesoro~地域に根付くイタリアンカフェ~」
一般的な提案の作品になっているのが残念です。イタリアの建物の特徴を色だけでなく、 多方面から取り組んで、自由な発想の『ローカリティ』を表現して欲しいです。
40「稜線が懐く町のとまり場」
地域の人が活動できる場所が少ないことに気付き、学生が中心となって地域の交流を生み出す観点は とても良いと思います。その取り組みと建物の形状のマッチングにもっと工夫が必要と感じました。
41「育てるイエ」
入居者が自由に個室を造る事ができるアイディアは面白い。ただ、実際に作れる人がどの程度いるのか疑問であり、自由に作って良い割には同じ箱が並んでいるパースが案の魅力を伝えきれていないと感じた。
42「イチョウと芸術家」
計画地の特性の捉え方がとても良いと思います。提案された建物の形態が、既存の一般的な建物の形態に囚われているのが残念です。建築はもっと自由に発想して良いのですよ。
44「遭遇」
ご提案の「ローカリティ」に対する考察はとても良いと思いました。具体的に提案いただいた再構築による空間変容の空間デザインコンセプトを知りたいと思いました。
45「森と共に生きる街 釧路」
地域の木材を使用するなどよく考えられている点もあるが、建物の全容が掴めないプレゼンテーションであった。
46「共生」
発想をする際には、自身の経験を媒介して発せられていることが大切だと考えています。
あなた自身が「住居空間と自然環境の境界線がなくなった」と感じた瞬間に思いを馳せて見て下さい。
47「人と共生する牧場」
馬と人が共生するコンセプトが面白く、ストーリーも良いと感じた。ただ、馬との共生を語る上で建物の設計だけでは不十分だと感じる。馬が気持ちよく走り回る草原と今回計画した建物の関係がどうなっているのか、この建物からどのような風景が眺められるのか。馬も人も心地よく過ごす場所はそのような事を考えなければいけない気がする。今回のテーマでは、周辺環境も建物と同等に重要だったと思う。
49「マチニイル-空き家に入れ込み、まちに入り込む-」
下川町のことを良く調べ、現状を把握している作品です。また、空き家を活用して暮らしレベルによって 進化させる方法は、とても魅力的だと思います。ただ、事業スキームは現在下川町にあるものなので、 作者独自の発展的な事業スキームを加えて欲しかったです。
51「『ゆ』の再興 木材のまち・津別における公衆浴場拡張計画」
親しまれてきた公衆浴場を再構築する際に、もう一つの町産業である木材を活用するアイディアが面白い。ただ、建築自体に目新しさはがないのが惜しい点であった。